男性の泌尿器科

男性の泌尿器科とは

男性の泌尿器科とは男性に多い症状は、頻尿と残尿感で、その他陰部のかゆみ・痛み、熱っぽい感じなどがあります。男性特有の疾患では、前立腺肥大症と急性前立腺炎、精巣がんなどがあります。ここでは、男性に多い泌尿器系疾患を説明していきます。

前立腺の疾患

「前立腺」とは、膀胱の下にあり、精液の一部を分泌する役割を持つ臓器です。クルミの実くらいのサイズ(15~20g)で、精子の働きをサポートする分泌液を生成しています。また、排尿コントロールにも関係している臓器とも言われています。

前立線肥大症

前立腺が肥大する疾患で、主な原因は加齢だと言われています。前立腺は尿道を囲むように位置しているため、排尿障害で症状を自覚するケースが多いです。

詳しくはこちら

急性前立腺炎

尿道から入ってきた細菌が増殖することで、前立腺の炎症が引き起こされる疾患です。また、細菌感染が原因ではない前立腺炎もあります。

症状

診察

問診で症状をお伺いした後に、尿検査や血液検査、必要に応じて直腸診を実施します。炎症の程度を知るために、尿検査では白血球の数と細菌がないかを確認し、血液検査では白血球の数やCRP値を確認します。直腸診では、前立腺に熱っぽい感じや、圧を加えた時の痛みがないかを調べます。

治療

抗生物質を服用しつつ、必要に応じて点滴治療も行います。数日程度で症状が治り始めますが、治療を中断すると耐性菌(抗生物質に耐性がついた菌)ができてしまいます。そのため、医師が「服用しなくてもいい」と言うまで、服薬は継続しましょう。

また、炎症が強い場合は入院が必要になります。その際は当院と連携している医療機関をご紹介いたします。

尿路結石

尿路結石とは

尿は腎臓で生成され、尿管を通って膀胱に一定量保存されてから、尿道を通って排出されます。この腎臓・尿管・膀胱・尿道をまとめて「尿路」といいます。尿路結石とは、この尿路のどこかに結石が生じる疾患のことです。

5mm程度の結石でしたら排石促進剤を服用することで、自然排石される可能性が高いです。しかし、自然排石が期待できない結石の場合は、体外衝撃波結石破砕療法(ESWL)や内視鏡的結石破砕術(TUL)を行います。

原因

結石ができる原因は完全に解明されていませんが、食生活の乱れ(塩分・糖質などの過剰摂取、過度の飲酒)や遺伝などが原因だと言われています。

結石の成分はシュウ酸の頻度が最も高いため、シュウ酸を多く含まれた飲食物(ほうれん草、キャベツ、サツマイモ、コーヒー、紅茶、チョコレートなど)を過剰に摂取しないことが大事です。また、カルシウムを摂取することでリスクが下げられると言われています。

症状

症状は結石ができる場所・結石の大きさによります。腎結石の場合は鈍痛が見られることがありますが、大抵は無症状です。尿管結石の場合は脇腹・下腹部の強い痛み、血尿、吐き気で、膀胱結石の場合は頻尿や残尿感、尿道結石の場合は、強い排尿痛、血尿、尿が出にくいなどの症状が現れます。

治療

治療法は結石の大きさや重症度によって異なります。5mm程度の結石の場合、自然排石できる可能性が高いです。この場合、こまめに水を飲んだり運動を行ったりしながら、経過観察していきます。

10mm以上の結石の場合は、体外衝撃波結石破砕療法(ESWL)で結石を砂状になるまで破砕したり、内視鏡的結石破砕術(TUL)で取り出したりします。腎臓に大きい結石ができた場合は「経皮的腎結石破砕術(PNL)」という、背中から腎臓に通じる穴を開け、穴から石を砕いて摘除する治療法を行います。最近は、TUL+PNL(TAP)という治療で効率的に結石の破砕を行う施設もあります。

また、感染症が併発している場合、重症化した場合は、一時的にカテーテルもしくはステントを留置し、感染尿の排出をスムーズに行えるようにします。特に「腎臓が一つしかない方」や、「片方の腎臓の機能が落ちている方」の場合でも、腎臓の機能を保つために緊急でステント留置を検討します。

包茎

包茎とは、亀頭の一部または全体が、包皮におおわれている状態のことです。

仮性包茎は包皮を簡単にむくことができるタイプ、真正包茎は亀頭をまったく露出させることができないタイプで、嵌頓(かんとん)包茎は、むいた包皮によって陰茎が締め付けられ、包皮を戻せなくなるタイプを指します。

なかでも嵌頓包茎の場合は、血流が悪くなり手術が必要になるケースがあるので、早急に治療を受けましょう。

仮性包茎

平常時は包茎状態ですが、包皮をむいて亀頭を一部もしくは全体を露出させることができる状態です。

無理に翻転させると嵌頓包茎になってしまうリスクがある上に、炎症化を起こすリスクも発生します。場合によっては、手術が必要になります。

真性包茎

平常時でも勃起時でも包皮をむくことができず、亀頭の露出ができない状態です。小どもの包茎の場合、経過観察や軟膏治療で自然治癒を目指すことができます。

衛生面や性交渉での問題が生じやすく、陰茎がんの発症リスクも上昇するため、成人では治療は必要不可欠です。

特に炎症が何度も再発する場合は、発症年齢に関係なく手術が必要になります。無理にむいてしまうと嵌頓包茎になるため、まずは医師へ相談しましょう。

嵌頓(かんとん)包茎

真性包茎とは異なり包皮をむくことは可能ですが、むいた包皮が陰茎を締め付けてしまい、包皮を元に戻すことができなくなる状態です。

締め付けられると血液の循環が悪くなり、痛みや腫れ、細胞の壊死を引き起こします。直ちに手術を行う必要があるため、すぐに受診してください。

泌尿器のがん

泌尿器がんは主に、腎細胞がん・腎盂尿管がん・膀胱がんなどがあり、男性の場合、前立腺がん・精巣がんを発症する可能性があります。 特に前立腺がんを発症するケースが多々あるため、要注意です。

がんは早期発見ができると、肉体的にも精神的にも負担が少ない治療で治すことができます。最小限の侵襲で治療を終わらせることも可能なので、社会復帰できるタイミングも早くなります。放置せずに、お気軽にご相談ください。

腎細胞がん(腎がん)

腎細胞がんは、尿を生成するための尿細管細胞にがんが生じる疾患です。男性に多い傾向があり、高血圧や肥満などの生活習慣病を抱えている人や、喫煙者の方も、発症リスクが上昇します。また、腎不全や特定の遺伝子異常などが原因になるケースもあります。

早期の時は自覚症状に乏しく、人間ドックや健康診断で偶然発見されることが多いです。進行すると、肉眼的血尿や腹部に腫瘤ふれる、腰背部痛、体重減少が主要症状として現れます。加えて、発熱、貧血、食欲不振などが現れることもあります。転移したところでがんが発見された後に、腎細胞がんが発見される傾向があります。

腎盂尿管がん

腎盂(じんう)または尿管内にがんが発生した疾患を「腎盂尿管がん」といいます。腎盂は腎臓で生成された尿を溜め、尿管に送り出す働きを持ち、尿管は腎盂から膀胱までの間にある尿の通り道です。

腎盂尿管がんは60歳以上の男性に多く、男性は女性の2倍発症率が高いと報告されています。原因は未だにはっきりとされていませんが、喫煙が危険因子だと言われています。 自覚症状に乏しく、検診で偶然発見されるケースが多いです。

主な症状は肉眼的血尿で、血尿の中に血液の塊のようなものが混じることがあります。この塊が尿管を塞ぐことで水腎症を引き起こします。水腎症になると背中の痛みが現れるため、心当たりがありましたら、泌尿器科を受診しましょう。

膀胱がん

膀胱がんの主な症状には、血尿(肉眼的血尿)、頻尿、残尿感があります。これらの症状は膀胱炎と似ているため、正確な鑑別が必要です。進行すると尿管の出口の閉塞が起こり、尿が腎臓にたまって水腎症を起こします。

さらに、下肢が腫れる(リンパ節転移)、血尿が止まらなくなるといった症状が現れます。最近では、ここまで進行して見つかることはまれですが、このような症状を自覚しましたら、速やかに泌尿器科へ受診してください。

前立腺がん

前立腺がんは、男性のがん患者の中でも患者数が一番多いがんです。日本では生活様式の欧米化が進んだことによって、前立腺がんの患者数は増加傾向にあると言われています。前立腺の外側にがんが発生しやすく、自覚症状はなかなか現れません。

現在は医療技術の進歩によって、PSA(prostate specific antigen:前立腺特異抗原)という高精度のスクリーニング検査や、MRI検査が普及されたことで、早期発見されやすくなりました。

症状

尿道の圧迫が発生しにくいため、自覚症状に乏しい傾向にあります。そのため、早期発見するには、人間ドックや健康診断でのPSA(前立腺特異抗原)検査で調べる必要があります。

症状が進行すると、頻尿や排尿困難、排尿障害といった症状が現れます。ただし、これらの症状は前立腺肥大症でもみられるため、正確な鑑別を行う必要があります。鑑別を行うにおいても、PSA(前立腺特異抗原)検査の実施は必要です。

診察

問診で症状やお悩みをお伺いしてから、必要な検査を行います。検査は、直腸診とPSA検査を行います。直腸診で硬いしこりが見つからない場合は、経直腸超音波検査やMRI検査でさらに細かく調べ、必要に応じて、前立腺組織を採取して調べる前立腺生検も実施します。前立腺生検を実施する場合は、連携している病院へご紹介します。

がんが発見されましたら、骨シンチグラフィ検査やCT検査などを行い、転移や進行度を調べていきます(早期の前立腺がんの場合は、骨・リンパ節などの転移は起きません)。

治療

早期前立腺がんの場合は、手術や放射線治療で治します。全がん協加盟施設の生存率共同調査による「病期別10年相対生存率」によりますと、前立腺がんの生存率は90%以上と報告されています。治療内容は、進行状態や年齢、基礎疾患の有無などに考慮して行います。

主な治療法として、手術療法(ロボット支援、腹腔鏡下または開腹根治的前立腺全摘除術)・放射線療法(密封小線源療法brachytherapy、強度変調放射線治療IMRT、高密度焦点式超音波治療(HIFU・自由診療)・内分泌療法・化学療法があります。

治療法 方法 適している方
手術 ロボット支援腹腔鏡下
前立腺全摘除術(RALP)
腹腔鏡下前立腺全摘除術
開腹根治的前立腺全摘除術
ガンが、前立腺の中にのみある方。(T1-2)またはごく少し周囲へ進展している方(局所進行性)(T3-T4)
放射線 密封小線源療法brachytherapy
強度変調放射線治療IMRT
・疼痛に対して緩和ケア目的で思考されることもあります
・内分泌療法と併用することが一般的です。
内分泌療法 内服 カソデックス®(ビカルタミド)
ザイティガ®(アビラテロン)
アーリーダ®(アパルタミド)
イクスタンジン®(エンザルタミド)
(オダイン®、プロスタール®)
全症例(一般には、高齢者、転移のある症例、術後再発の方)
・新規ホルモン剤と言われる薬は、副作用の観点から内服薬が増えることがある薬もあります。一般的には安心して使えますがごくまれに重篤な副作用が出ることもあるので初回導入は対応ができる大きな施設が望ましいと思います。
注射 LH-RH
アゴニスト
リュープリン®(リュープロレリン)
ゾラデックス®(ゾラデックス)
全症例(一般には、高齢者、転移のある症例、術後再発の方)
LH-RH
アンタゴニスト
ゴナックス®(デガレリスク)
・日本では、内服と注射を併用している事が多いです。
化学療法 点滴 ドセタキセル®(ドセタキセル)
ジェブタナ®(カバジタキセル)
初診時より進行している方、内分泌療法に抵抗性になった方。
内分泌療法(ホルモン療法)

内分泌療法(ホルモン療法)とは、男性ホルモンの分泌や働きを抑制させることで、前立腺がん細胞の増殖を抑制させる治療法です。注射もしくは内服薬を用いる薬物療法で、主に、放射線と組み合わせて根治が期待できるがん、手術適応されないがん、進行性のがんなどに行われることが多い治療法です。

内分泌療法を行っても進行する可能性もあるため、治療後でもこまめに経過観察しなければなりません。

根治的前立腺切除術

75歳以下の患者様に行われる根治治療法です。腹腔鏡やロボットを用いた手術など、お身体への負担を最小限に抑えた手術を選択します。術後に尿失禁や勃起不全を起こすこともありますが、技術が進んで機能を残せることが多くなってきました。

放射線療法

放射線でがん細胞の遺伝子を死滅させる治療法です。進行前立腺がんの進行を抑制させたり、転移部位へ照射したりする場合に用います。75歳以上でも施術可能なので、幅広い年代の方の治療ができます。

照射後は、尿失禁や排尿障害を起こすこともあります。

<放射線でがんの治療を行うとき>

前立腺に限局しているときは、ホルモン療法と合わせて、ブラキセラピー、IMRTでの治療、保険治療になった重粒子線での治療があります。最近では手術後に再発された方に、サルベージ放射線治療を行います。

高密度焦点式超音波治療(HIFU)

早期前立腺がんに行われる方法です。自由診療の対象になる治療法で、前立腺に超音波を照射し、がんを熱凝固壊死させる治療法です。早期前立腺がんに行われる方法で、高密度の照射を行うことから周囲の臓器(尿道、膀胱、直腸)に尿道狭窄、排尿障害や直腸損傷など合併症を起こすことがあります。

精巣がん

精巣がんは、精巣内の精子を造る精細管上皮細胞から発生する疾患です。他のがん疾患と比べ、若い世代の発症率が高い傾向にあります。発症頻度は1年間で10万人に1人程度と言われています。発生の原因は未だに解明されていませんが、乳幼児期の停留精巣などが関係しているのではないかと指摘されています。

進行するまで気づかないことも多く、違和感や、片側の精巣の腫れ、急激な肥大化、硬いしこりなどで自覚するケースがあります。 精巣がんほど、早期発見・早期治療が大事です。症状に気が付いているけれど、恥ずかしがって来院されないケースがほとんどです。恥ずかしがらずに受診しましょう!

TOPへTOPへ